【ニッポンのあそこで】制作ディレクター西沢氏と行く、稚魚スポットの旅
―先程の話の続きになりますが、結局3ヶ月の試作期間は無事にクリアしたと。
西沢氏:はい。先程の技術を応用してなんとかPSPで動く3D東京地図は完成しました。止まっているかの如く、ものすごくゆっくりとしか動きませんでしたが…、ごまかしました(笑)。
―それでOK出てしまうんですね。
西沢氏:動いたことには変わりないですから。オレは約束を守ったぞ、さあ作らせろ!、と。もちろん、このシステムでいけるという手ごたえは感じていました。
―そして本格的な制作に移った訳ですね。
西沢氏:はい。まぁ、そこからが大変だった訳ですが。
―本格的な制作に移って大変だった点はなんですか。
西沢氏:メモリーです!
―言い切りましたね(笑)。具体的にはどういうことでしょうか。
西沢氏:このゲームでは日本地図を10km×10kmのマスで区切っています。そのマスの中をひとつひとつ作っていき、最終的に5000枚のマスが揃うと日本地図が完成します。ちなみに東京は30枚程度のマスです。PS3ならまだしも、PSPで動かすとなると大変なことです。
―ものすごくゆっくりとしか動かなかった東京ですら、30マスだと。
西沢氏:そうなんです。その約166倍の容量のデータをPSPでシームレスに動くようにしなければならない。当然、地方は東京ほど表示するものがないので容量的には軽いのですが、それでも全国合わせて60万件のスポット情報を表示する訳ですから。
―何か打開策があったのでしょうか。
西沢氏:革新的な何かはなかっですね。この3D地図の多くはコンピュータにデータを食わせて自動的に生成しているものが多いのですが、最終的には人力でちょっとずつメモリーを捻出していきました。既に用意してあったグラフィック素材をやむなくボツにしたり、建物を何度も見直してはポリゴンの割り方を変えてみたり、アニメーションを工夫して短い尺でも効果的に見えるように工夫したり、と。ひとつひとつは数キロバイト程度の小さい努力ですが、それらが集まると大きなアドバンテージとなります。デザイナーのみんなには随分と苦しい思いをさせてしまいましたね。
―そういった細かい変更でメモリーを削っていったのですね。
西沢氏:あとは、山や海岸線の地形表現ですね。山々の尾根や美しい海岸線は絶対に省略してはいけない。しかし、容量は1/4にしなければいけない。そんな無茶な指示を地図データをお願いした会社にしてしまいました。
―地図データは他の会社にお願いしていたのですか。
西沢氏:ノウハウないですし、日本中のデータを集めるのは自分たちでは不可能ですからね。最終的に出来上がった3Dデータは、『こんなに情報量があって再現度が高いのに、なんて軽いデータなんだ!』と、某業界では注目を集めているそうですよ。ニヤリ。
―ゲームというジャンルから出た発想だから成し得たと。
西沢氏:向こうとしては、かなりイレギュラーな球に手を出したらホームランになった感じだと思いますよ(笑)。
―かわいいゲームかなと思っていましたが、実はハードな作りをしているんですね。
西沢氏:独特のミニチュア感を持っているので気づく方は少ないかもしれませんが、実はかなりすごいヤツです。
<歩くこと数分>
―それにしても一里塚が見当たらないですね。
西沢氏:もうそろそろのはずですよ。先程の『旧古河庭園』の充実っぷりを見てしまうと、期待が高まりますね。
―とは言え、稚魚ですよ。
西沢氏:全国5000箇所の稚魚スポットに選ばれた実力はどんなものでしょうね。・・・・・・あっ。
―ありましたか?
西沢氏:あ、あれかな?
3:「西ヶ原一里塚」
―小さっ! しかも道路のど真ん中ですよ。。。
西沢氏:これは、写真を撮りに行くわけにも行きませんね。危ない上に、隣が警察署では。いやぁ、それにしてもしょぼい。まさにがっかりスポットですね、最高です!
―それを言いたかったのが旅の目的ですし、良いのでは?
西沢氏:正直なところ『旧古河庭園』ではがっかりしませんでしたからね。その点『西ヶ原一里塚』はよう出来てる。まさに稚魚スポットな感じがして、好感が持てます。
―案内板もあるみたいですから、ちょっと見に行きましょうか。
西沢氏:せっかくですからね。そもそも案内板が無ければ、あの石柱の意味も分からないですね。道の真ん中を分断してまで鎮座する石柱って、訳が分からない。
―ええと、『西ヶ原一里塚』は江戸時代に日光御成道に築かれた、日本橋から2番目の一里塚です。
西沢氏:2番目ですか!? その中途半端さも稚魚にふさわしいと思います。ますます好感度アップです。
―そもそも日光御成道は現在の本郷通りが主要なルートにあたりますが・・・、西沢さん聞いてますか?
西沢氏:細かい説明に興味は無いですね。自分にとってはこの“がっかり感”を味あわせてくれただけで、十分な意味がありますから。
―まさに「稚魚の旅」目線でのコメントですね。
西沢氏:ですね。知的探究心から一里塚を調べに来た訳ではありませんので(笑)。
―まさに「稚魚の旅」目線でのコメントですね。
西沢氏:ですね。知的探究心から一里塚を調べに来た訳ではありませんので(笑)。
―では、こいつはこんなところで。
西沢氏:こんなところでよいでしょう。十分な感動を与えてくれましたから。次は、飛鳥山公園にある『晩香盧』と『青淵文庫』を二つまとめてご案内しますよ。
―2カ所はここから近いのですか?
西沢氏:近いですよ。ほんの数百メートルです。着いたらちょっと休憩しましょうか。
<歩くこと数分>
―飛鳥山公園到着です。本当に近かったですね。
西沢氏:稚魚スポットがこんなに密集しているのは、北区ぐらいですかね。稚魚の旅に優しい区だと思います。
―そしてこちらが、『晩香盧』と『青淵文庫』でしょうか。
西沢氏:両方とも飛鳥山公園内にある渋沢栄一の別荘の庭園内にある建物みたいですね。ちなみに北区になぜ渋沢栄一の別荘があるのかなどは、一切分かりません。
―おや、ここは建物内に入るが有料となってます。
西沢氏:庭園内はタダみたいですから、まずは外観の様子から見に行きましょう。どこかのおじさんが昼寝してますが、気にせず行きましょう。
4:「青淵文庫」
―まずこちらが『青淵文庫』のようです。
西沢氏:なかなかモダンな建物ですね。うん、とても四角いと思います。
―確かに建物から窓に至るまで、全て四角形で統一されてますね。
西沢氏:こっちに案内板がありますよ。ええと、渋沢栄一の80歳のお祝いに、門下生が寄贈した建物らしいですね。なんと贅沢な!
―こっちに何かありますよ。
西沢氏:え〜と、『青淵文庫』の露台(那智黒石が敷き詰められたテラス部分)基礎の一部である・・・、むにゃむにゃ。よう分からん。断面が展示されているけど、那智黒石ってどれのこと?・・・さすが国指定の建物、高尚ですな。
―すごく適当な感想ありがとうございます。それでは、『晩香盧』に移りましょうか。
5:「晩香盧」
西沢氏:名前がずいぶんお洒落な響きですよね。そして建物がこちらと。外観は普通の洋館ですが・・・、中はお洒落だ! 調度品から何から何まで、なんだかセレブな感じの内装ですよ。名前の響きを裏切らないですね。
―案内板には、渋沢栄一の喜寿を祝って某企業から送られた建物とあります。ちなみに『晩香盧』はバンガローの響きからきているらしいです。
西沢氏:またもらいものか!なんでもかんでももらってますな、渋沢さんは。ただ、バンガローからきた名前というのは面白い。当時としては最先端なセンスだったんでしょうね。
―中に入ろうと思ったのですが、そろそろ閉園のようです。
西沢氏:『晩香盧』の中は見たかったなぁ。『青淵文庫』は別にいいけど。
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