異色にして本格派の推理ノベルの新スタンダード! 【アナタヲユルサナイ】
1992年に「弟切草」を発表し、「サウンドノベル」というジャンルを確立したゲームクリエーター・麻野一哉。そして、「ファイナルファンタジー」シリーズの作曲を手がけ、今なお語り継がれる名曲の数々を生み出した作曲家・植松伸夫。
この二人のトップクリエーターが手を組んだ作品が、今回紹介するPSPソフト「アナタヲユルサナイ」だ。
PSPを縦に持ち、難事件を解決せよ!
「アナタヲユルサナイ」は、プレイヤーは探偵事務所の調査員「竹内理々子」を操作して、依頼人が抱える問題を解決していくノベルタイプのアドベンチャーゲームだ。
このゲームには、他のアドベンチャーゲームにはない特徴的なシステムが数多く搭載されているが、その中でも最も特徴的なもののひとつが「PSP本体を縦に持つ」という独創的なプレイスタイルだ。他に類を見ない珍しいスタイルだが、操作系統はシンプルにまとめられていて、すぐに馴染むことができる。
また、画面が縦長になったことにより、登場人物の立ち姿が大きく表示されるようになり、このことが後述の「会話パート」で大きく生きることになるのだ。
様々なモードで探偵気分を満喫!
このゲームが特徴的なのは、なにもPSPの持ち方だけではない。ゲームには様々なギミックが豊富に盛り込まれていて、プレイヤーの探偵気分を大いに盛り上げてくれる。
関係者への聞き込みを行う会話パートでは、会話の途中に「Check」マークが出てくる時がある。その時にアナログパッドを入力することで、関係者の姿に「注目」し、関係者のなにげない仕草や表情を観察し、会話の主導権を握ることができるのだ。
どんな細かい手がかりも逃さず、それをきっかけに相手へ揺さぶりや説得をする姿は、まさしく探偵そのもの! 画面が縦長で表示されていることもあり、関係者の細かな仕草もバッチリ表示される。隅々まで調査して事件を解決に導こう。
また、ストーリーの進展に伴って、プレイヤーは様々なモードを活用していくことになる。それら特殊なモードの一部を紹介しよう。
推理モード
調査が進むに従って、複数の容疑者が捜査線上に浮かぶことがある。そんな時、誰を重点的に調べるか推理する必要がある。選ぶ相手によって、異なる展開が待っているのだ。
尾行モード
時には関係者を尾行し、手がかりを掴まなくてはならないことも。しかし、発見されてしまってはすべて水の泡。慎重に行動しよう。
撮影モード
決定的な証拠といえば、やはり写真! アナログパッドでフレームを合わせ、チャンスを逃さないように撮影しよう。
男と女の感情が交差する、アダルトなシナリオ
プレイスタイル、システム共にこれまでのアドベンチャーゲームとは一線を画するこのゲームだが、シナリオもまた一般的な同ジャンルのゲームと少し系統が違う。
竹内理々子:本作の主人公で、ある探偵事務所の調査員。おおざっぱさとナイーブさが同居した繊細な性格が魅力だ。
主人公である竹内理々子は探偵事務所に勤める探偵なのだが、巻き込まれる事件は殺人や誘拐といったセンセーショナルなものではなく、浮気調査の依頼をはじめとした現実社会の探偵業に即したものばかり。それらの依頼に応対する主人公も、同僚の助けを借りて調査をしたり、時には身分を偽って関係者に聞き込みをしたりと、こちらも現実の探偵同様の手段を取る。そのリアリティある描写もまたこの作品の見所と言える。
しかし、そんななにげない依頼も、真相が明らかにつれて意外な展開を見せる。その練り込まれつつも大胆に進むストーリーは必見だ。
また、それらの依頼と平行して展開する、理々子を取り巻く人間関係にも注目したい。
理々子の先輩にして夫である草薙学との気持ちのすれ違いや、父であり探偵事務所の所長でもある竹内武雄とのちょっとぎこちない親子関係など、人と人との繋がりが丁寧に描かれていて、プレイを重ねる度に主人公である理々子に感情移入してしまうことだろう。
現代社会の「探偵」というものを巧みに描きつつ、ちょっとホロ苦い人間関係も取り入れたストーリーは、人生の酸いも甘いも味わった大人のための物語と言える。
スタイリッシュにして本格派、ノベルゲームの新時代到来!
ストーリー面だけでなく、植松信夫率いる音楽レーベル「DOG EAR RECORDS」の作曲者たちが手がけるBGMは、落ち着いた雰囲気のこのゲームに実にマッチしている。
また、雑誌やWebで活躍中のイラストレーター・たかなししんによる洗練されたキャラデザインは、これまでのアドベンチャーゲームとは一線を画すスタイリッシュさを醸し出すことに成功している。
このように、これまで発売された数多くのアドベンチャーゲームとはひと味もふた味も違う雰囲気に仕上がっているこの作品。シンプルな操作と奥深いストーリーを持つ「アナタヲユルサナイ」は、ライトユーザーからヘビーなアドベンチャーゲームファンまで幅広い層に受け入れられる内容の、ノベルゲームの新時代の到来を予感させる一本に仕上がっている。
アドベンチャーゲームファンならずとも、注目に値する作品だ。
Profile:闇崎ハヤオ(やみざきはやお)
「ゲーム」と名の付くものならなんでも遊ぶ雑食性ゲームライター。このゲームのキャラクターは個性派揃いですが、中でも最初の依頼人である神谷静香は凄いですね。まさに「スイーツ(笑)」といった感じ。必見です!
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