新たなステップに入った「ゲーム人口の拡大」――2008年 任天堂は何を目指すのか
2007年は任天堂にとって大きなチャレンジが結果となってあらわれた、喜ばしい1年だったといえるだろう。
「ゲーム人口の拡大」第2のチャレンジとして立ち上げたWiiが、任天堂自身も想像しなかったほどに成功を収めたからだ。しかし、それでも挑戦者でありつづける任天堂は、今年第3のステップにチャレンジするという。
「ゲームで遊ぶ人を驚かせたい、笑顔にしたいだけなんです」と語る、任天堂 取締役社長 岩田聡氏。彼は昨年をどうとらえているのか。そして、今年は「ゲーム人口拡大」のために、どのような舵をきるのか。
--昨年は大きく市況が変化したのはもちろん、ユーザーの意識も変わった年だと思います。2007年には、どのような印象を持っていますか?
任天堂 取締役社長 岩田聡氏
2007年は、大きく2つのことがありました。
2007年の前半は任天堂に対する見方も色々あり、「Wiiが一体どうなるのか、本当に売れ続けるのかどうかは分からない」と言われていましたが、おかげさまで順調に立ち上げることができました。
ですので、Wiiという機械が、据置型ゲーム機の中で非常にメジャーな存在になることができたという、その確かな一歩を踏み出せたのがひとつ。
もうひとつは、欧州でも2006年からDSによる市場拡大が進んでいましたし、米国も2006年は暦年で過去最高の業績になっていましたが、日本のDSブームを超えるような大きな盛り上がりは、2007年の年末商戦が初めてでした。その意味で、昨年は、任天堂が言い続けてきた「ゲーム人口の拡大」が、ようやく世界中のマーケットで本格的に認められた年だったということです。
日本では、2005年末から2006年の頭にかけて大きな変革がありニンテンドーDS(以下、DS)が勢いよく売れはじめました。ただ、当時は、「それは日本独特の現象であって、リアルなゲームが受ける海外はちがうのではないか?」という話もありました。
でも、私たちは人が何を面白いと思うのかは世界共通のはずだと思っていて、またその想いで作ってきたマリオやゼルダに代表されるタイトルが、これまでも世界中に受け入れていただいてきたのだから今回もチャンスはあるはずだと思っていました。そして、実際にDSやWiiによる圧倒的な市場拡大を目の当たりにし、昨年後半には「ゲーム人口の拡大」が米国や欧州にも受け入れられていただいたんだという、確かな手応えを感じられるようになりました。
--たしかに、Wii発表当初はかなり懐疑的なコメントをする人たちも多かったですね。
とにかく業界の常識からは外れたことばっかりしてましたから。ですから、「そんなことは常識では考えられませんよ」という事との戦いの連続でしたね。
--その戦いをつづけられたのはなぜでしょう? 今後はこうなる、というような確信があったのですか?
これは、「最初からこうなることは分かっていました」って言えたら格好いいんですけれど、そういうことではないんですよ(笑)。むしろ、「あそこに誰かが行かなければならないのではないか」という想いだけでした。
私たちは、このままゲームを遊ぶ人たちの入り口がどんどん狭くなっていったら、未来の可能性がなくなっていくと思いましたし、社会の中でゲームが悪者にされている状況を放置して、将来ゲームが栄えるとはとても思えなかった。それをどうしても変えたい。そして変える上で任天堂の強みは生きるはずだ、と考えたのです。
しかし、色々な見方をされる人たちの言葉に、全く説得力を感じなかったということではありません。ご指摘をいただくたびに、本当に色々なことを考えました。考えましたけれども、一歩一歩進むたびに、少しずつ市場の変化というのが感じられたからこそ、チャレンジを続けることができたんです。「ゲームで遊ぶように見えない人が、売り場で脳トレをさがしていたよ」なんて話を聞いて、私たちは勇気づけられていたんです。
そして、こういった小さな反応は、販売数にあらわれる前に微妙な変化としてあらわれるんです。でも、販売数の大きな変化が現れるまでに、一体何カ月かかるのか何年かかるのかは分からない。「5年経っても世の中が全然動かなかったら、私は社長はクビだな」と思いながら働いていましたね(苦笑)。
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